『後藤は思う』 Vol.1                          2007年11月
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  今月(2007/10)の7、8日に彦根の滋賀大学で行なわれた環境経済政策学会の2008年大会に参加した。また、27、28日の両日、山形大学で開催された地球システム・倫理学会にも参加した。
環境経済政策学会ではCSR分科会の座長と環境マネジメントの分科会での討論者を引き受けていたので他の分科会の発表は聞けなかったが、地の利(?)の関係かどうかわからないが、例年に比べ全般的に参加者が少なかったように思う。
地球システム・倫理学会は更に地の利も関係したのか少人数であったが内容は面白かった。
ここでいくつか感じたことを書きたいと思う。

1. 嘉田知事のコミットメントと気候変動問題
  初日の午後の公開シンポジウムで滋賀県の嘉田知事が2030年に1990年比でCO2を50%削減することをコミットされた。東京都が昨年の正月にロンドンで2020年に2000年比25%削減すると宣言したものにつづくものである。東京都はどちらかといえば官僚リードに感じられたが、知事リード、すなわち政治リードはとしてははじめてのことであり、多くのマスコミもいたはずなのにどこにも報じられていない。これは何故だろう。とにかくあちらこちらでこのことを取り上げてもっと話題にしてもらうよう働きかけねばならないと考えている。
  気候変動問題は人類がもたらしたシステム的変動であることをIPCCの第4次レポートは断言したからこそハイリゲンダムの合意につながったと理解している。「人類がもたらしたシステム的変動」であるからこれの解決は「人類がもたらすシステム的変化」による以外は無いことは論理的に明確である。このことは、山形での山下和也氏(京都文教大学)の発表でも見事に論証していた。
  「人類がもたらすシステム的変化」とは具体的には、50年後、100年後を考え、「現在」時点で我々がどのような社会システムを選択するかということに他ならない。IPCCは6つのシナリオを想定して影響を予測しているが、我々の選択は2050年に全世界で半減、すなわち日本は1990年比90%削減という結果となる低炭素社会(Low Carbon Society, LCS)しかない。その意味で、嘉田知事の「2030年に1990年比でCO2を50%削減」というのは極めて真っ当なコミットメントである。 

2. 低炭素社会(Low Carbon Society, LCS)
  我々はまず2050年に1990年比90%削減という結果となる低炭素社会(Low Carbon Society, LCS)とはどんな社会かを想定する必要がある。さまざまな提案は可能であるが、これはなかなかまとまらない懸念が大であり、企業としては「待つ」のではなく、自ら設定することが必要であろう。「待つ」企業は必ず退場させられよう。
  設定した2050年の社会システムを前提にしてバックキャスティングの手法により、具体的なイノベーション戦略を立てることこそ、今、個別企業に期待されている喫緊の課題であり、これに着手しない経営層に対してはステークホルダーから退陣を迫るべきである。さすがに東京都は官僚リードのためかサボタージュはなく具体策が次々とうちだされつつある。
  その意味では、嘉田知事も2030年の社会経済システムイメージを設定し、バックキャスティングでの具体的戦略・戦術を発表することが必須事項であり、知事と滋賀県人の見識が試されよう。

3. 「人類がもたらすシステム的変化」による以外は無いことの論理的証明
  先に、山下和也氏(京都文教大学)の発表について述べた。彼の発表は「オートポイエーシスの観点から見た共生と環境」という発表である。彼は環境の専門家ではなく、オートポイエーシス理論という耳慣れない理論を専攻する哲学徒である。ドクターも取り、ドイツにも留学した優秀な哲学徒であるが、3年以上も非常勤講師の職しかなく、生活費はホテルでの皿洗いで稼いでいるようである。ここにも後先を考えないで博士を大量生産することのみを先走らした教育システムの欠陥が現れていると断じざるをえない。

4. 博士課程研究者の発表について
  両学会で文系の博士課程研究者のいくつかについて共通の懸念をもった。何らかのデータを引用し、モデルに当てはめて分析し、結論を導くという形での発表が多かった。社会科学での研究の手法とか、訓練という意味では良いと思うが、問題は引用するデータ、設定する前提等にかなり問題があることである。従って結論は、我々のように実務にも関わっている人間から見ると荒唐無稽というのはひどすぎるとしても、違和感のおおいものでであった。気候変動問題でIPCCに関わっている科学者たちがモデルの設定と、その改善に日夜取り組んでいるのを聞くことに比べてあまりにも安易に研究・発表しているように思える。これは彼ら博士課程研究者に責を負わすべき問題ではなく、多くは指導教官の質、もしくは指導内容の問題のようにも思える。若い研究者を育てる指導者は学会発表をさせるにあたっては指導教官名も明記するようなことが必要ではないかと感じている。
後藤敏彦
環境監査研究会代表幹事
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