持続可能性の枷
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  私達が生きてきた時代は,公害に始まり地球環境問題まで行き着いた環境問題の嵐であった.この中を無我夢中で突っ切って来る間に,環境問題の性質が大きな変貌を遂げたことに気づかず,私達はともすれば昔のパラダイムのまま行こうとするきらいがある.
  今思えば,公害は数学的に線形な問題であった.川が汚れているのは工場や都市排水が流れ込むからで,その対策としては排水処理や下水道を作れば良い.悪いのはあの資本家だ.別の所では,喘息がひどいのはあの工場の煙突から出る排煙のせいだ.悪いのはあの工場主だ.このように,公害は個別・線形的に考えることができた.
  この線形思考パラダイムは,環境活動家の脳裏に強くプリントされており,地球環境問題でもその種の行動をとることとなった.地球温暖化は炭酸ガスなどの排出が多すぎるのが原因であり,それを減らすべく「低炭素社会」を構築しよう.生態系を守るべく,森を守ろう.食糧問題の解決のため食糧を増産しよう,あるいは農業公害を減らすべく有機農法をしよう,などが言われている.
  しかし地球環境問題は,その各問題の間で相関性が強く,全体として「複雑系」のシステムとなっている.各問題を各々バラバラに考えることはできない.こうした複雑な問題を前にして,線形思考の環境活動家はただ途方に暮れるばかりである.
  私は,地球環境問題に対処するには,複雑なシステムをトータルに把握することのできる,「シンセシス」によるのが良いと考えている.これは,まず解決策の作業仮説を叩き台として提示し,幾多の実践を踏まえた後,反省と総括により,さらに高レベルの作業仮説を生み出すことを目指すものである.これは実世間で大抵の人が実践していることであるが,線形思考の理論家には評判の悪いものである.
  地球環境問題にシンセシスを適用した結果,「自然生態系の保全や自然エネルギーや食糧の確保などの課題は,土地利用に関して相互にぶつかり合う」というテーゼを得た.私は,これは地球環境問題に係る環境科学の基本テーゼであると,考えている.
  そして,「この衝突を緩和するため,原子力エネルギーの利用,植物工場による食糧の面積当り生産性の増大,あるいは海(や砂漠)を耕すことが必要とされる」という作業仮説を提示している.その正当化理由や過去の批判に対する反批判を何度も提示してきた.
  こうしたテーゼや作業仮説が必要となる背景としては,既に人類の活動は地球の環境容量を超えており,今後ますますギャップが拡がることがあげられる.
  上記テーゼや作業仮説は,常に批判を歓迎しているものであるが,願うらくは,何らかの論文の形で反論してもらいたいと考えている.こうして,さらに高レベルの作業仮説が生み出されることが期待される.
  地球環境問題や持続可能性の問題などは,このように,すっきりとした解決策は望めないものであり,厭なことを市民サイドも受け入れざるを得ず,枷を嵌められて戦うような風情がある.それでも人類は前に進まねばならないと考える.
水谷潤太郎
日本上下水道設計株式会社
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Copyright (C) 2007 EARG , All rights reserved.