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1、自治体の環境マネジメント・監査は可能でしょうか?

はい、可能です

環境監査にはいろいろ種類がありますが、ヨーロッパの規則であるEMASにしろ、1996年10月にJISとなったISO14001にしろ、システム監査といって「計画がシステムにのっとって実行しチェックされ、チェックにもとづいて改善がなされているか」をチェックするものです。

理論上はすべてのことがらに環境監査をすることは可能です。また、ISO14000の対象は企業に限らず、すべての組織です(規格の主語)。イギリスでは2つの自治体でサービス部門がひとつずつISO14001を取得しています(環境サービス部門、廃棄物部門)

日本の自治体の場合、環境監査を導入しているところはまだなさそうですが、大気・水質といった環境のモニタリング、その結果による改善対策の実施がシステムとしてチェックされていれば、比較的環境監査に近いかもしれません。たとえば下水道サービスの場合、処理場なら処理場をひとつのサイトとしてとらえれば、環境監査は比較的導入しやすい部門と思われます。

ただし、システム監査の場合、まず環境マネジメント・システムが導入され、それを運用することがなされていなければ、環境監査はできません。システム監査をなさりたい場合は、まずシステムを構築することが必要です。そして、システムを構築し運用している部門ではなく、独立した部門で環境監査を行いますので、環境監査を担当する部門を決めることも必要となってきます。

環境マネジメント・システムや環境監査の実務的なことは現在、書店で多数書籍が出回っています。対象は企業向けですが、理論的にはどの組織でも実務は変わりませんので、ご参考になる点が多いのではないでしょうか。

2、自治体の環境政策の課題は何でしょう

多くの自治体において環境政策がマネジメントされていないのが、課題といえます。
例えば経営管理サイクルである
Plan(計画)、Do(実施)、Check(点検)Action(改善)がうまくまわっていません。あるいは回っていたとしても、その情報が十分に地域住民に伝えられていません。多くの自治体において環境政策や環境計画があり、また実施も行っていますが、その結果を点検して、実施段階でも計画の見直し行うような仕組みまで持っているところは少ないといえます。
また計画の実施結果の情報開示も不十分といえます。

3、なぜ自治体にとってEMS導入が必要でしょうか

環境問題への取り組みは、従来のの公害問題への取り組みと異なり自治体のすべての部局が相互に関係してきます。公害対策では、有害物質の排出に規制をかけることで効果を上げてきました。その結果エンドオブパイプ(末端処理)が主流となっています。しかし地球環境問題をふくめ現在の環境問題に対応するためには、より上流から解決することが望まれています。例えば廃棄物問題への対応は適正処理だけでは、急激な減少傾向にある最終処分場の解決になりません。廃棄物問題への抜本的な対応は、廃棄物を出さないようにすることです。そのためには廃棄物が出ないような工程の開発やリサイクルを行う社会システムが必要になります。このように現在の環境問題への対応は、環境問題を最上位の概念とした仕組みで取り組む必要があります。そのモデルとしてEMSは最適であると考えられています。
また地域住民の環境への意識の高まりから、行政サービスとして環境問題への取り組みが自治体に求められていますが、その取り組み状況の説明として、
EMSへの取り組みおよび第3者機関からの定期的な審査というISO14001の枠組みは、非常に有効であり信頼性の向上にもつながります。

4、環境基本計画や率先行動計画の実施にあたって、環境マネジメントシステムを導入しなければいけないのでしょうか。

いけないということはありません。

ただし、率先行動計画の推進にあたって、環境管理の考え方を取り入れることを定めているところがあります。例えば、国の率先行動計画(国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取組の率先実行のための行動計画)の関係省庁会議申し合わせには、目標や取組内容を明らかにした行動計画について推進・点検体制を整備し、実施状況について適切な組織単位で把握し公表するとともに、監査を行うことが記述されています。

監査については、環境マネジメントシステムを参照し、監査範囲を以下のように定めています。

 

監査の対象は計画の実施状況であり、システム監査ではなくパフォーマンス監査であることがわかります。

また、監査のフローは以下のようになっています。

 

監査のフロー

 

地方自治体が率先行動計画を策定するにあたっても、環境管理・監査の考え方を取り入れている自治体があります。率先行動計画は、北海道、福島県、埼玉県、千葉県、東京都、徳島県、長崎県、板橋区、鎌倉市などで策定されており、推進体制の部分で、千葉県や長崎県、板橋区などで環境管理の考え方を取り入れた記述が見られます。

率先実行計画は、一般の事業者・消費者と同様に、日常の活動等によりエネルギーや資源等の消費や廃棄等による環境への影響の低減を目的としたもので、住民や事業者への率先垂範の意味を持っています。この計画の着実な推進とフォローアップ、継続的な取組に向けた方策として、環境管理・監査の考え方が取り入れられているのです。例えば板橋区では具体的に庁内環境管理・監査システムを設け、率先実行計画を推進しています。板橋区のシステムでは、「目標値達成状況監査」に併せて「管理システム監査」も行うことにしています。

さて、環境基本計画の推進にあたって、具体的に環境マネジメントシステムの導入を行っている自治体はまだ見られないようです。環境基本計画のマネジメントとなると、環境行政の施策実施や公共サービスなどが対象として含まれることになります。施策の実施状況や目標の達成管理などをどのような指標や手法を使って管理していくかは、まだまだ検討していく必要がある状況のようです。

5、EMSと環境アセスメントについて

環境マネジメントシステムは、その組織が環境への負荷を継続的に改善していくための活動をPDCAサイクルに基づいて実行するしくみです。
 また、環境アセスメントは、開発事業を行う際に、環境に与える影響を事前に予測、評価し、事業の実施にあたって反映させる手続きであり、自治体が事業を行う際に、環境負荷を低減させるための一つのツールです。
 したがって、EMSに則って環境アセスメントを考えれば、予め設定されている手続きに沿って、環境アセスメントが実施されているか、その手続きが有効かどうかをチェックし、見直すこととなります。
 これまで、日本国内で実施されてきた環境アセスメントは、予測される影響を考慮した代替え案を提案し積極的に採用するといったものより、開発行為における手続き的な要素が強い傾向がありました。
 現在、環境影響評価法ではフォローアップの手続きが設けられています(自治体ではすでにある程度とりくまれてきている)。これまで、このフォローアップの結果は主に環境保全対策の実施確認と予測技術の向上、予測の不確実性への対処に活かされてきました。環境マネジメントシステムの観点からは、この結果等を評価し、その対象地域における、いわゆる環境パフォーマンスの改善を目指した、環境アセスメントの手続きの継続的な改善が望まれることになるでしょう。
 また、
EMSの中で環境アセスメントを明確に位置づけることによって、環境アセスメントによって得た知見を次の意思決定に反映させたり、合意形成に役立てるといった活動も期待できます。

 


環境監査研究会事務局
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